被写体に当たる光のほとんどを司るので、一番明るい照明である必要があります

今回採り上げる内容の概要は下記の通り:

  • 撮影場所の奥行きを活用し、被写体に焦点を当てながらも背景をぼかす。デジタル一眼レフをお持ちの方で50mmや85mmのプライムレンズを使っている方であれば、特にこの方法は効果的です。

  • 写真の構成を考え、目線の方向に注意します。また良いポートレート撮影の為には面白い設定が不可欠です。

  • 写真の最終型がカラーであろうと白黒であろうと、色合いをちゃんと考慮すること。自然光での撮影、照明器具を使っての撮影問わず、照明がちゃんとしていることを確認する。

  • 被写体を楽しい気分にさせ、集中しながらも笑顔で居られる状態を保つこと(撮影したいのが笑顔の写真ではない場合を除く)。


■カメラとレンズ

性能の良いカメラであれば、それだけオプションの数も多くなり、ポートレートの質を上げるためにできることも多くなりますが、いたってベーシックなコンパクトカメラでも、十分に良い写真を撮影できます。いずれにしても、デジタル一眼があればその分オプションが増える、というのは事実です。今回は、コンパクトカメラとデジタル一眼とではできることが違うので、別々に説明してみたいと思います。


コンパクトカメラ

デジタルカメラの場合、センサーは大きいほど便利です。センサーが大きいものの方が空間の奥行きをより再現出来ます。コンパクトカメラに搭載されているセンサーは大抵小型なので、このセンサーで空間の奥行きをとらえたい場合、ズームを目一杯使うことが最も効果的です。


被写体に向かってズームインしていくと、空間が平面化されてきます。空間の奥行きが浅くなり、フォーカスされている部分が少なくなってきます。この特性を生かせば、被写体のみにフォーカスを当てることが可能です(この理由に関してはこの記事の範疇を超えているので説明は割愛)。大型なセンサーの搭載されたカメラを買わずにこの効果を得るには、これが唯一の方法です。拡大ズームを目一杯使うと、写真がブレやすくなります(特に手ブレ防止機能が付いていないカメラの場合)。手ブレ防止機能の付いていないカメラの場合、ブレない写真を撮るのはなかなか困難なので、三脚の使用をオススメします。

デジタル一眼レフ

デジタル一眼レフを持っている方であれば、まず、どんなレンズを使用するかが重要となってきます。ポートレート写真用には、50mmよりもワイドなもの(50mmよりも数値が低いもの)は避けた方が良いでしょう。通常は50mmを使用します(時によっては35mmの場合も)。これは、50mmが人間の目に映るものと大体同じだからです。これらのレンズは絞りが広く、光を多く取り込みます。よって、比較的光が少ないところでも撮影可能で、さらに、空間の奥行きを浅く撮ることが可能です。ここでの問題は、デジタル一眼レフの50mmレンズは50mmレンズとは限らない、ということ。これはカメラのセンサータイプによります。


デジタル一眼レフのセンターは大きく分けて二種類あり、APS-Cとフルフレームに分けられます。フルフレームセンサーは35mmフィルムのものとほぼ同等なので、フルフレームセンサーのカメラに取り付けられた50mmレンズは、正確な意味での50mmレンズとなっています。最近のデジタル一眼レフで、価格帯が20万円以下くらいのものであれば、APS-Cが主流となっています。これはフルフレームよりも少し小型で、レンズイメージを1.6倍に拡大します。つまり、APS-Cセンサー付きのカメラで50mmレンズを使用した場合、80mmレンズを使っているのと基本的に同じ、と言えます。


APS-Cセンサーカメラで50mmレンズ風の写真を撮る場合、28mmレンズ(44.8mmに拡大)、または38mmレンズ(56mmに拡大)が必要となります。50mm前後で絞りが少なくとも、f/2.8(理想を言えばf/1.8以下)のものであれば大丈夫です。ポートレート用には50mmレンズが一般的ですが、85mm以上のレンズを使うカメラマンも多くいます。結局のところ、どれが自分にとって一番良いか、状況に最適かというのは、やってみないと分かりません。ポートレートであれば、なんでもかんでも50mmが最適というわけでは決してありません。いずれか一つを選ぶのであれば、特に予算が限定されている場合は、50mmがオススメです。50mmプライムレンズ、つまり50mmで固定されズームイン、ズームアウトが行えないタイプのものが最安のレンズなのですが、奇妙なことに一万円近くも通常安いこのレンズが、一番綺麗な写真を撮影してくれたりします。


予算が厳しいから、できれば一番安いものを…というのであれば、古いレンズを試してみてください。フォーカスや色などの不完全さが、時に上の画像のような興味深い写真を写してくれたりします。



●空間の奥行きを浅くする際の注意点
空間の奥行きを浅くするテクニックは、被写体を際立たせるにはとても効果的ですが、浅く取りすぎてしまった場合、被写体の一部がボケてしまう危険性もあります。オートフォーカスの場合、カメラから一番近い顔の部分にフォーカスする傾向があり、鼻の部分がフォーカスされることが多いです。ビューファインダーやLCD画面で見る限り、フォーカスされているように見えるかもしれませんが、パソコンの画面で確認すると目の部分がうまくフォーカスされていない、ということになりがちです。マニュアルフォーカスすると、顔のどの部分にフォーカスを当てるかが調整できるので、それがベストですが、難しい場合は絞りを若干遅めに設定して下さい。絞りをf2.8にセットしておくと、被写体の顔全体がフォーカスされつつ、背景を上手くぼかせます。

■構図とテクニック

●構図

標準的なポートレートの構図は人物の顔の写真なので、分かりやすいかとは思いますが、その中でもいくつかルールやコツがあり、望んでいる写真をうまく撮影するために活用できます。


三分の一の法則

初心者向けの写真教室などに通うと、通常最初に習うのが三分の一の法則です。これは、フレームを縦横それぞれを三分割して考える、とてもシンプルな法則です。これにより9つのボックスができ、これらの線は4カ所で交わります。これらのボックスをガイドラインとし、被写体の目をどこに置くかを選んでいきます。上の線が交差するあたりに鼻根部(星印の辺り)を配置するのがベストと言われています。これにより、写真を見る人の目線は顔の中心へ向かいます。可能であれば、鼻根部と交差しているポイントの下と、被写体の唇が交差するようにし、目線を顔の主要パーツへと保つようにします。良いポートレートを撮影するために三分の一の法則は必須、というわけではないですが、見せたい部分を見せるには効果的な方法です。

最終的に白黒にするにしても色合いには注意する

最近ではカラーが主流ですが、あえて白黒にするというのも効果的です。最終的にカラーにする場合も白黒にする場合も、それぞれの色が持つ効果については注意を払う必要があります。上の画像の例を見てみて下さい。例えば、被写体の肌が白く、髪が金髪などの場合、暗めの背景がコントラストを生み出すので、効果的です。カラーで撮影する場合、被写体とケンカしない色を選ぶことが重要になります。色白の金髪の被写体の場合、黄色と赤が立つので、青や緑などの背景が良いです。あえて目の色と背景を同じ色にし、目をより際立たせるのもありです。いずれにしても複数のオプションを試し、でき上がりを見ながら最終決断を下していきましょう。これらの色合わせについてもっと知りたい方は、撮影用のベストカラーの選び方(英文記事)を読んでみて下さい。


カラーの場合だと問題になりにくいのですが、白黒に変換した際、背景にある暗い部分を考慮する必要があります。被写体に若干バックライトを当てると、背景から被写体を分離可能です。ちゃんとした照明機材がない場合、ケンカしそうな色合いのアイテムは避けましょう。影によって被写体の顔の一部が見えなくなったり、その他の要素と混ざってしまったり、というのをわざと行う場合以外は、なるべく顔をはっきり写すのがポートレート写真の鉄則です。背景に気を配るだけでも、写真の仕上がりはずいぶん変わってきます。

アングル、ロケーション、衣装はクリエイティブ要素!

カメラを被写体に向け、顔だけを正面から撮影するのは言ってしまえば簡単です。それほどバリエーションもないので、これだけでもエレガントな標準的なポートレート撮影は可能なのですが、もう少しクリエイティブなモノを撮影したい場合、例えば、被写体に上目遣いでカメラを覗いてもらうなど、色々なオプションがあります。


ポートレートによっては、被写体がカメラを直視しないのも良い手法です。


さらには小道具を使って、遊び心いっぱいの構図を作り上げるなんて手も。


はたまたシチュエーションを変えてみるというアイデアも。


良い写真を撮るにはやはり試行錯誤が不可欠です。想像力を働かせてクリエイティブな写真撮影を試してみて下さい!


●基本照明

ポートレート撮影用の照明は、比較的シンプルです。顔に芸術的な影を落としたいなど、変則的なことをしないのであれば、大体同量の光を顔に当てることで不自然な、または邪魔な影を排除すれば良いでしょう。特定の状況では、照明によってできる被写体の影が、写真の構図に影響を与えてしまう場合もありますが、背景から離れた状態で背景をボカすという撮影方法の場合、これについてあまり心配する必要はありません。かといって、顔に直接照明を当てていればいい、というわけではもちろんありません。これだと、鼻などの影が出てしまいがちで、被写体も光で何も見えない状態なので、なかなか自然かつ素敵な笑顔を作りづらくなります。ポートレート撮影定番の照明方法は下記です。


この設定の場合、左手のメイン照明が被写体を照らし、残りを図の右上にあるフィルが照らすようになります。後方にある照明はそのままですが、「バックライト」と呼ばれます。バックライトは強い光である必要はなく、被写体の輪郭を背景から切り分ける働きをします。


メイン照明

この照明は、被写体に当たる光のほとんどを司るので、一番明るい照明である必要があります。プロ用の機材で1Kくらい必要、というわけでは決してありませんが、プロ用の機材がない方も、できる限り明るくして下さい。直接光を当てると当然のことながらかなり眩しいので、必要に応じて白い傘やパーチメント紙を使うなどして、光を和らげましょう。パーチメント紙はオーブンの温度でも平気な紙なので、照明くらいの熱ではびくともしません。また、ワックスがついていないので、何かが溶ける心配もありません。


使い方も簡単で、パーチメント紙をクリップで留めてやるだけです。電球を直にさわることは避けたいところですが、光を通し易いようにできるだけ近づけましょう。紙を通すことで光が加減され、柔らかくなります。全ての影をなくすのではなく、被写体の顔がはっきりと分かるのに十分で、不要な影が出現しない程度が目安です。


※注 照明器具はとても熱くなるので注意して下さい。必要な場合は手袋を使用するなどして、やけどには十分気を付けて作業して下さい。

バックライト

バックライトはとてもシンプルなコンセプトです。必要なものは照明を反射させる白板パネルのみ。それを直立させ、被写体の横に配置することにより、被写体の顔の反対側にも光が当てられ、顔全体への光が均等化されます。メイン照明よりも弱めの照明を使用しても良いですが、大抵は白板パネルで十分です。


バックライトは、被写体と背景を切り分ける場合に必要なものなので、他の2つの照明よりも光を弱くします。極端に言うと、被写体に後ろから光が当たっていれば良いので、光はちょっとで十分です。背中全体である必要はなく、顔を撮影する場合であれば、後頭部の部分にちょっと当てれば良いです。特に和らげる必要はありませんが、強すぎる場合は、パーチメント紙を使いましょう。













誰でもプロみたいなポートレート写真が撮れるとっておきの撮影方法教えちゃいます!|ライフハッカー[日本版]